リチウムイオン電池 電極材(負極95μm・片面塗工)の打抜き加工性試験結果

リチウムイオン電池は、充電と放電を繰り返す二次電池の一種で、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで、電気が発生する。携帯電話やノートパソコンなどの電子機器や、電気自動車の動力としてもすでに導入されているが、更なる高容量化・性能向上に向けて、現在も世界各国で開発競争が続いている。

リチウムイオン電池の正極と負極は、それぞれが直に接触すると短絡(ショート)を起こす。電極の加工部分にバリ・ダレが発生すると、バリなどが絶縁体を越えて接触する可能性があり、電極の加工性の問題は極めて重要である

今回は総板厚95μm(銅基材10μm、活物質片面塗工)の試験片を、精密打抜き治具(クリアランス2μm)により打抜き加工する試験を行った。

試験仕様

試験対象素材

材  質 :負極基材 + 銅箔(Cu)
板  厚 :95μm(銅箔 10μm)

使用試験設備

打抜き用治具:目視抜き用小型打抜き金型( 野上技研製 電極抜きハンドパンチ
打抜き穴径 φ10.00mm
パンチ-ダイ間クリアランス 2μm

検査顕微鏡:マイクロスコープ(キーエンス製 VHX-6000)
拡大倍率 ~2500倍

試験結果

加工後上面

上面からはバリ、変形は見られない。

加工後断面

銅箔にもバリ・ダレはなく、活物質部分にもハガレ・滑落等の乱れはない。

試験実施者コメント

負極加工においては、基材となる銅箔にバリ・ダレが発生したり、塗布された活物質の崩落・層間剝離が発生したりするなどの問題がしばしば起こるが、ハンドパンチによる加工では、バリやダレ、変形なく、良好な結果が得られた。
 
打抜き加工はその原理上、バリが発生する際、パンチがダイに入り込む方向と逆向きに発生する傾向がある。そのため、片面塗工の電極を打抜く場合、セパレータと接する塗工側にバリが発生しないよう、基材側から打抜くことが望ましい。

今回の試験では、基材側から打抜いたサンプルを観察し、基材側・塗工側の両面ともバリ・ダレのない良好な結果を得た。
形状や材料の脆弱性、生産工程を考えたときに、異なる打抜き工法を検討する際は、打抜き方向による品質の差を考慮する必要がある。
電池材料加工技術研究センター
諸田